2013年7月17日水曜日

コンラート・ツーゼ 「計算する宇宙」その3


Chapter2の1節目,「Concerning the Theory of Automatons」読みました。

計算機畑第一線の人がオートマトンを説明する...ということで,若干身構えて読みましたが,本節はオートマトンの初歩的な解説だったのでほっとしました。

 「本書を読むのに,オートマトンについての完全な知識は必要ない」とも書いてあるので,安心して読める本のようです。



ちなみに,オートマトンってなんでしょうか。
名前の響きがとても格好良いですね。
名作ライトノベルのブラックロッドにも『人造霊<オートマトン>』とか出てきて興味が湧きオートマトンを勉強しようとすると...,
なにやら数式や遷移図を並べられて,「これがオートマトンです。機械です。」と言われます。

「なんでこれが機械なの? ただの式だよ?」
初見での腑に落ちなさと,なにか騙された感が大きい術語トップ3に入ると思います。

オートマトンは,「機械の設計図」と捉えるのが一番いいかなと私は思っています。
機械がどのように振る舞うかにフォーカスをあてるために,抽象化が行われています。
そのため,その式や遷移図に従っていれば,実装はどういった形でも良いわけです。

例えば,『硬貨を規定額入れることで,内部の状態が「購入可能」に遷移し,その状態において購入ボタンを押すと,商品が排出される』というオートマトンがあったとき,出てくる商品は,ジュースでもアイスでもガチャガチャでもアイカツ!カードでもいいわけです。

抽象化により,1つのオートマトンでいろんな自販機に対応することができています。

また,さらに抽象化して,「硬貨」を「何らかの決済手法」とすると,クレジットカードや図書カードなどにも対応可能になります。

さらにさらに抽象化を進めていくと,『ある入力 Ix が規定回数入力されると,内部の状態が Sx に遷移し,その状態においてある入力 Iy が入ると,ある出力 Ox が得られる』と,教科書に載っているようなオートマトンになります。
ここまで抽象化を行うと,自販機の枠組みを越え,例えば洗濯コースを選んだ後スタートボタンを押すと始動する洗濯機や,間違ったパスワードを規定回数入力するとパスワード再設定画面に移動するWebページなども,このオートマトンの実装の1つとなります。

というわけで,オートマトンは「機械の振る舞いの設計図」です。


さて本節は,全ての情報は,Yes と No の2つで表すことができる。1 と 0 のビットで表すことができる,というところから始まります。

この Yes No といういくつかの入力が機械に入ると,AND や OR や NOT により処理がなされ,Yes と Yes の AND は Yes というように出力が得られます。

論理学とか論理回路のベースの部分ですね。

レジスタの回路図と真理値表もあり,論理回路の教科書のような節です。


論理回路の基本的な説明を経て,いよいよオートマトンへの言及が始まります。

ツーゼはここで,3種類のオートマトンを挙げています。

まずは有限オートマトン。一番基本的なオートマトンです。有限個の入力・状態・出力をとります。 前述の例で挙げた自販機なども,これに含まれます。

つぎに,Autonomous オートマトン。
ツーゼの説明によると,入力を持たないオートマトンで,一度動作を始めると,外部からは介入できないまま,状態遷移を繰り返していく。
そして,出力はあまり重要ではない。
というオートマトンです。ただ,このオートマトンと,次に登場するセルオートマトンとの違いがあまりはっきりと分かりませんでした。
とにかく,ひたすら見守るだけの機械全般をツーゼは Autonomous オートマトンと呼んでいるようです。

最後に,セルオートマトン。
ここでは,周期的に状態の反復を繰り返すオートマトンとしています。
本書出版よりもだいぶ後に,ライフゲームというシミュレーションが考案され,そのうちの特定のパターンと言えると思います。
本書で一番重要なオートマトンであり,後の章でより詳しく述べるとのこと。


そして本節の最後に,「オートマトン理論に基づく思考」という言葉を用いて,時間経過に伴う状態遷移という観点から数学や物理のモデルを観察する,という方法を述べています。


新たなキーワード,セルオートマトンが出てきました。
引き続き読んでいきたいと思います。

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