2013年7月25日木曜日

コンラート・ツーゼ 「計算する宇宙」その6


Chapter2も佳境に入ってきました。
4節,「Maxwell Equations」です。

出ました! マクスウェル方程式です。

前節での,状態遷移からみた微分方程式に引き続き,微分演算を含む物理の重要式,マクスウェル方程式の登場です。

電磁気の授業はマクスウェル方程式直前までしか取っていなかったため,参考書と首っ引きで解読していきます。



 本節で扱うのは,真空における電磁場の拡大を表す,マクスウェル方程式に限定するとのことです。

早速有名な4つの数式がでてきます。

$rot H = \frac{1}{c} \frac{\partial E}{\partial t}$
$rot E = \frac{1}{c} \frac{\partial H}{\partial t}$
$div E = 0$
$div H = 0$ 

#ちなみにこの式を読み取るのにも若干時間がかかりました...(^_^;)
  こんなギリシャ文字あったっけと思ったら,ドイツ式筆記体の H や E でした。

なんか定数がかかってたり,電界の発散が 0 だったりと気にかかりますが,公式ってわりと人によって定義が違うのでとりあえずスルーして読み進めます。

これら4つの数式のうち,下2つは状態遷移形式を持たないが,上2つは簡単に状態遷移形式に変換できるとのこと。
#まあ下2つは右辺が定数(しかも)0なので,変換できないのも納得です。

こういう人が”簡単”と言うと疑ってかかってしまいますが,実際に簡単でした。

$rot H = \frac{1}{c} \frac{\partial E}{\partial t}$より,
$dE = c * rot H * dt$
また,$E + dE \Rightarrow E$なので,
$E + c * rot H * dt \Rightarrow E$

と,本書通りになりました!
磁界Hについても同様です。

もともとの形式が t を変数にした微分形,つまり時間変化に関する式なので,状態遷移の文脈にとてもしっくりきますね。

それにしてもオートマトン理論とマクスウェル方程式をしっくりとコラボさせるとは...。
ツーゼの切り口に驚かされます。


次にツーゼは,マクスウェル方程式が,電磁界で生じるプロセスの全てを記述できる理由に触れています。 
その理由とは, 自然界では,電磁波の生成や消滅が起こらず,ただ電荷の移動のみがあるから とのことです。

ツーゼは,この理由について数学的証明を行なっている文献を調査しましたが見つけられなかったそうです。

しかし,代わりに,一様に動く電荷による電界について興味深いコメントを見つけたと,"Beckersauter"という文献を挙げています。


以降,本節は,この文献が主張している,一様に動く電荷による電界で生じる,楕円状の歪みについての話に移っていきます。
なお,この歪みはローレンツ収縮に対応しているとのこと。

そして,
「マクスウェル方程式は相互作用に関する特定の理論に対して不変である」
という主張は,
「自然界の用いる,場の側方の拡大というトリックの結果,相互作用に関する特定の理論が基礎づけられた」
と言い換えることができる と述べています。

それでは,ここでのキーワードの,側方の拡大(= 楕円状の歪み)の性質はどのようなものなのでしょうか。

ここでは,+e と -e の間に生じる典型的な電界(つまり電気双極子による電界)を,この電界の分布について何も知らないという前提のもとで算出することを通じて,述べていくそうです。

まず,+e と -e の間の電界の強さは一定であるという,明らかに間違った電界分布から話を始めます。

この電界分布にマクスウェル方程式を適用すると,電界の漸近的な近似となるそうです。

図が示されているのですが,なんとも分かりづらいです。
1段目の波形を t で微分した結果,2段目や3段目の様な形になるので,横軸が時間であることは間違いないと思います。
#ただ,下方に書いてある双極子の図の真ん中に引いてある線のせいで, 横軸が位置を表しているのではとも思えてしまいます。

とにかく,前述の
$E + c * rot H * dt \Rightarrow E$
の式から,1段目の波形と3段目の波形を足し算すると,4段目の$E'$の形になりますよ ということを述べたいのだと思います。
得られた$E'$は,本物の電界の形に近づいているので,これを「漸近的な近似」と言っているのだと思います。


そして,電界を求める際に電界濃度を用いなかったことに言及します。
このことは,自然界においても電界濃度は意味を成さないことを証明しているのか。
いやそうではない。
電界濃度が意味を成さない状況があるとするならば,マクスウェル方程式の rot の式の両方とも,
$div E = 0$
を一般的に満たす電界分布を成り立たせてしまう。
こうなると,この電界のどこにおいても,電界の湧き出しがなく,それゆえ電界自身が電界分布に何の寄与もしないことになってしまう。

なかなか話に置いていかれそうになりますが,要するに自然界には電界濃度があって,電界の形成にちゃんと寄与してますよ ということでしょう。


そして...話はまた飛んで(と私が感じてるだけかも...),電荷を生み出すことも消滅させることもできないために,我々は縦波の場の形成について実験することができない と述べています。

電磁波は横波なので,では縦波は? ということでしょうか。

なかなか話が入り組んでいて手ごわかった本説は,
「縦波についての実験の理論的根拠の有無は,数値安定性の概念に関連してとても興味深いものであり,後ほど詳しく述べる」
という言葉で締めくくられています。

後の章を読めば本節の意味をもっと理解できるかも!
そんな希望を抱きながら,引き続き読んで行きたいと思います。


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大学入試でも大学の授業でもお世話になったこのマセマ社シリーズ。
今回の記事を書くのにも役立ちました。

そういえば教授の部屋にもシリーズ一式が揃っていて,こういう人たちも参考書で確認したりするんだと,ちょっと教授を身近に感じましたねー。





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