2013年7月21日日曜日

コンラート・ツーゼ 「計算する宇宙」その5


「計算する宇宙」解読報告の続報です。

今回は,Chapter2の3節目,「Differential Equations from the Point ov View of the Automaton Theory」です。

前節は,アナログコンピュータとディジタルコンピュータの話から,級数展開と極限操作をオートマトン理論と結びつける内容でした。


これを受けた本節は,極限操作と密接な関係を持っている,微分方程式とオートマトン理論の話になっていました。




まず,微分方程式で表現できる物理現象の例として,回転する容器の中の水面の形状を挙げていました。

本書の図よりも,名古屋市科学館 の図の方が状況が分かり易かったです。
重力と遠心力の合力として,斜め下向きの力が働くため,水面はすり鉢状となります。

ここに出てくる微分方程式が,どこから出てきたのかというと(これ系の物理からちょっと遠ざかってたので調べたり,式とにらめっこしたり),

合力 N について,N が重力方向となす角をθとすると,
Nsinθ = mrw^2
Ncosθ = mg
がなりたちます。

両辺をそれぞれ割って,
tanθ = mrw^2 / mg 
となります。

また,水面と N は直交するので,横軸(r軸)と水面のなす角もθになります。
縦軸を y とすると,
dy / dr = tanθ
となります。

以上より,
y' = dy / dr = tanθ= mrw^2 / mg
となって,無事本節と同じ式になりました。

本に載ってる式導出をするときは,本当に同じのがでるのかな...と不安になりますね。

ただ,本に載っている式が正しいからという理由じゃなくて,この文脈での作者の気持ちをトレースして勉強するために,同じ式導出をしたい。
という心掛けをすると,健全かもとふと思いました。


さて,本節の内容に戻ります。

例としてでてきたこの式は,容器を回してしばらく時間が経過した後の,定常状態を記述している。
決して,容器を回した直後の過渡状態を表しているのではない。
と述べています。

そして一般的に,過渡状態を数学的に記述することはほぼ不可能であり,定常状態が重要である場合には,過渡状態をつぶさに追う必要はない。
と述べています。

その上で,微分方程式においては,重要なのは基本的な原理ではなく,数値解法へ及ぼす影響であることを指摘しています。

定常状態の原理を表した式よりも,過渡状態における状態遷移を,その直前の状態から導出する式の方を用いて,数値解析により,定常状態を近似したほうが,解くのが楽であるそうです。

ここで非常に重要だと感じたことは,過渡状態は,定常状態のように,その瞬間に観測された物理量で記述すべきではなく,直前の状態からの遷移で記述すべきであることです。

つまり,過渡状態は絶対的記述でなく,相対的記述をすべし!ってことじゃないでしょうか。

そして,相対的記述である状態遷移を得意としているのが,オートマトン理論というわけです。


物理現象の状態遷移記述の例として, 気体の圧縮が挙げられています。

気体の状態は,圧力と速度の分布で与えられ,圧力の変化はは速度の分布の変化を生み出す。
そして,新しい速度分布は,分子の新しい濃度を生み出し,分子の移動を引き起こして,新しい圧力分布を生み出す。

このように,気体の前状態から次状態を導出できるとのことです。

確か電磁波も,同様な,磁界による電流の励起 → 電流による磁界発生 → 磁界による電流の励起 → ・・・
という状態遷移の繰り返しによって進行する仕組みでしたね。


以上,本節では微分方程式を用いた物理現象の記述が述べられていました。
議論の中で,物理現象を,状態遷移として記述することの重要性と,それによるオートマトン理論の重要性が明らかになりました。

それではまた読み進めていこうと思っています。



物理の問題に行き当たった時,まず参照するのが下記の本です。
大学入試で大変お世話になりました。
周囲の人もだいたいこの物理はこの本で勉強したみたいです。
定番の,そして良く練られた参考書です。





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